蜜蜂と遠雷と台風
恩田陸氏の蜜蜂と遠雷は 近年読んだ本の中で実に素敵で
音楽が全編に流れるように映像がくっきりと浮かんでくる
作品だった。
読みながら 既に「これは絶対に映画になる。」と思っていた。
役者の甥に「もしこの映画のオーディションがあったら絶対に受けてね」
と言っていた。
しかし、こんなに早くと・・いう勢いで映画になった。
日本の映画の技術はこうした音楽映画を容易に作成するように
なったのだ、と感慨深かった。
映画館は15年ぶりに行った。
少しは気楽に考えてもいいのだが、とにかく携帯の電源を長い時間切ることは
できない不安な病人を長く抱えているとコンサートや映画は行けなくなる。
最近は少しずつだが足を運ぶように心がけている・・
しかし久しぶりにこの映画は私の中で思った通りのヒット作品。
日本のピアニストのレベルは実に高くて 年齢も若い
かつて故中村紘子氏が台頭していらした頃とは優秀なピアニストの数が違う。
映像の中でもプロコフィエフが見事に弾かれていたが、ピアノは
代役であっても雰囲気は主役の栄伝亜夜役の松岡茉優さんが好演した。
甥にオーディションを受けてほしかったのは松坂桃李氏の演じた明石役
一番年齢が高くて、このコンクールでピアニストの夢を絶つかどうかを賭ける役柄
この中ではオリジナルの「春と修羅」という曲を実際に藤倉大氏が作曲されて
各ピアニストが即興のような形で演奏する場面が一つのメインとなるが
その「春と修羅」のカデンツアの「アメユジュトテチテケンジャ」という
宮沢賢治の「永訣の朝」の中の妹の可愛らしい別れとも言えるこの言葉・・
おそらくは多くの人の心の中に学生の頃の国語の時間に口ずさんだ詩として
あるだろうこの言葉が、美しい旋律となって明石の弾くカデンツァとして
表わされる。
それを聞いた栄伝亜夜と風間塵が感動して、そのモチーフから
ドビュッシーの「月の光」そしてベートーベンの「月光」までを
連弾で演奏する場面は圧巻だった。
原作を読んで映画の脚本のように感じたのは珍しく勘が当たった気が
した。
映画館もなんだかしんどいが、こういう音楽的な映画は観客も大人が
ほとんどでしかも実に静か・・
コンサートよりも息づかいも気にならなくて、劇場観客の復帰としては
いいきっかけになった。
若い森崎ウイン 鈴鹿央士という役者がいい。
そして今夜から台風19号の不安のある時が流れている。
どうか被害少なく通り過ぎますように・・・
by akageno-ann | 2019-10-11 22:58 | エッセ- | Trackback | Comments(0)