デリーの暮らし

にほんブログ村

インドの暮らしは日本では想像もつかないものでした。
渡印すればすぐに、コレラやチフスに罹ってもしかしたら早期帰国もありか？など
予想以上に恐れることもあり、また日本の知人友人の中には

『よく行くねえ、そんなところへ』と呆れる人もいました。

そうなのかもしれません。それだけにあちらの暮らしはまるで夢の中のように今も思います。

その時代にはまた格別な生活があり、今も大変懐かしく、もう一度味わいたいと思ってしまいます。

デリーは10月末のディワリという光の祭り（ヒンズー教）がまるで新年を迎えるような賑やかでしたから、

クリスマスや新年については特に目立ったこともなく、静かなものであったようです。

日本人会もまた冬休み休暇にインド国外に出る家族が多くて、デリーはひっそりとしていました。

インドを出る・・・それは主に健康管理休暇と買出しです。
もちろん自腹ですが・・・私たち夫婦はゆっくり羽を伸ばしました。

それは日本の柵からも、日本人会の関わりからも外れた不思議な感覚がありました。

デリーの冬は確実に参ります。あの暑さはどこへ行ったのか？と思うほど、肌寒く、雨は殆どふらないので、

乾燥して、砂埃は家の中まで入り込みます。
掃除は念入りにしないと、ほこりっぽくなります。

サーバントが気をつけてくれて、ソファや絨毯も丁寧にブラシをかけて掃除してくれていました。

しかし、一番気になったのが、鼻の掃除です・・・いつも鼻の粘液は黒いのです。

風邪はそれほど引くことはありませんが、気になってティッシュで鼻をふくと、黒いのです。

それはちょっと哀しいことでした。

私たちは最初の冬休みに、シンガポールへ出かけました。

先輩の皆さんと同様に日本系のホテルに泊まりました。ホテルの一階は日本のデパートが入っていました。

食料品はほぼ日本のスーパーマーケットと同じです。

インドから飛行機で５時間、近いという感覚でチャンギ国際空港に到着すると、

日本と同じ清潔な空港と溢れんばかりの物たちに出会いました。

日本の香りまでしてきます。もちろん中国的でもあるし、インドの人もいます。
飛行場から直接タクシーに気楽に乗って、その運転手がインド人だと親しく話せました。

インド独特の発音に慣れていたのです。

ホテルでチェックインすると最初に行うのはバスタブに綺麗な湯をなみなみと張ります。

インドでは湯沸かし器が小さいので二人が別々に使うとすぐなくなってしまうので、遠慮気味でした。

ですからここでは久しぶりに私が先に手足伸ばしてゆっくり入浴タイムです。

そしてここで2日過ごしただけで・・鼻の中まで白くきれいになります。

空気が悪いのだなあ、デリーはと改めて思いました。
でも大した病気もせず、元気でいましたから、人間は皆環境に適応する力を内在しているとつくづく思いました。

年末のホテル暮らしは大掃除もなし、年賀状もなし、この頃は一応クリスマスカードを代用させてました。

親戚の集まりなし、気楽なものでした。

今のコロナ禍で小家族の単位で過ごした年末年始にあの頃を思い出しました。

買い物は最初の日にホテルの下のデパ地下で、デリーの先輩方が築いてくれたここの店員さんとの繋がりで、

インドへ持ち帰り用に特別措置をしてもらいます。

先ず、日本語堪能な現地人スタッフがついてくれて、肉、魚、冷凍品を細かく買い出して保冷用の箱につめ、

大きな冷蔵庫にデリーへ帰る日まで保管し完全冷凍しておいてくれます。

どれほど大きい冷凍庫があるのだろうと・・妄想したほどです。

私たちは二箱でしたが、家族の多い方や出張者を持て成す商社員の家ではもっとたくさんの買い物でした。

デリーはとにかく外で食事は少なかったので、お客様ごっこのように次第に親しくなる人々との交流は

日本人同士では和食のオンパレードでした。インド人の家庭ではそんなに辛くないインド料理を

振る舞われ、それはなかなか美味しかったです。

それにまつわる話も　小説｢アンのように生きる　インドにて」に出てまいります。

どうぞ機会を見つけて読んで戴けますように　お近くの図書館に予約して読んでいただけるとまた嬉しいです。