人気ブログランキング | 話題のタグを見る

惜別


私の誕生花はガクアジサイという説も
あります。それで好きな花なのかも
しれません

惜別_c0155326_15330175.jpg

夜中ずっと降っていたのに
市民清掃の時間はほど良い曇り空
皆で「暑くなくてよかった」と
草刈りできました

惜別_c0155326_15334405.jpg
友人の通夜に伺いました
式場の最寄り駅から案内板はありましたが
600メートルほどの歩道は喪服の方たちが
一列になって埋め尽くしました

故人を悼む声のこれほどに大きい・・・・と
感じさせるお式でした


にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ

お時間ある方はmoreの小説を読んでみてください

第二章 第6話です  転載はご遠慮ください(_ _)  藤原沙也子







  その6

 

 北川先生と言う人の肩にすがる様にして声を出して泣いた母の、

その光景を見ている時間はそんなに長い時間ではないのに、

私はその映像を自分の脳裏にしっかりと焼き付けてしまった。


母は何故あのような態度を施設のスタッフのいる前でしたのか、

ちょっと私にはわからなかった。

ただおばあちゃんがいたらきっとそんなことしなかった、と思う。


でも北川先生はとても良い人だった。

母の肩を抱いて、

「遅くなってしまったね」

と、言って、すぐに父と私の方へ向かって歩き出した。

母もすぐに涙を微笑みに変えて、そのあとをついてきた。

なんにも悪びれる様子もなく。


だから、不思議とその周りの雰囲気も別段特別なものを見たような空気は残らなかった。


「理子ちゃんだね。大きくなったね」


そう私を見つめた北川先生の目はとても優しかった。

「理子、小さい頃に一度だけお会いしているのよ。

北川先生はインドでとてもお世話になった方なのですよ」


インド・・時々母から聞くようになったその未知の国、そこで同時代に一緒に暮らしていた人らしい。

一緒にというのは、インドの日本人学校に父が赴任していた時に同じ学校にいた先生ということだ。


父が倒れてから半年もたって現れたその人はどこに住んでいるんだろう、などと理子は考えていた。

その北川先生は父に手を出して握手した。

父は右側の手ははしっかり使えるので、その手を握り少しだけ恥ずかしそうにした。

「とおく から・・・よく きて ください ました」

たどたどしいが、父はしっかりとそう語った。


「元気になったのですね?すぐに来れなくて、本当に失礼しました」

「あなた、嬉しいわね。北川先生とお茶をいただきながらゆっくりお話しましょう」


そういって、スタッフの方にむいて、母は

「びっくりさせてご免なさいね、インド時代に親戚のように親しかった方なのです。

高知からいらしてくださった方なの、今日のリハビリはこれまでにさせてください」

と、いつになくきっぱりと言った。


親戚のような・・・といっても私はこのおじさんに会った記憶はないのだ。

母と父とこの北川という、私から見れば初めて会った知らないおじさんのような

との間に秘密の部分が、たくさんあるような気がしていた。



                              つづく


by akageno-ann | 2024-06-02 15:43 | エッセ- | Trackback