片付け三昧のこの頃



第四章 その1
平田メイ子は二週間とあけずに翔一郎の病院に顔を出すようになった。
必ず事前に美沙に電話を入れて時間を合わせてリハビリ病院にやってきた。
その都度に小さな花籠だったり、お菓子だったり・・と見舞いの品を携えて。
「あまり気遣いをしてはいけないわ。大事なおこづかいでしょう?」
美沙は喜びながらもそう辞退したが、メイ子はちゃっかりと
「でもいつもご一緒にお食事ご馳走になってしまう私ですよ」
とお茶目に舌をだした。
理子も一人っ子なのでメイ子の存在は次第にうれしいものになっていたのだ。
無理のない形で一緒に食事やお茶をして三人の会話は打ち解けていった。
「お母さんたちはお元気なの?」
美沙は在外の日本人学校に赴任している、
メイ子の両親平田夫妻について聞いてみたかった。
デリーでは親しくしていたにも関わらず、美沙自身に子供がいなかったせいか、
平田よう子は次第に美沙から離れていた。
美沙がそれなりに身軽に活躍していた時代で、
同年代のよう子は美沙の思っていた以上に嫉妬心があったのだ。
今になってみると美沙はそのよう子の素直さが懐かしく思い出される。
当時幼かったメイ子がそのときのままに自分を慕ってくれていることに、
母としてのよう子の複雑な思いもわかるようになったのは、
やはり娘理子の存在だった。
家庭内で姑信子との間にたって、理子がそれぞれの持つ愛情に自然に甘えて
可愛がられる様子をみていると、子供の持つエネルギーの大きさを
感じずにはいられない美沙であった。
子供を型にはめることなく誰にも愛されるように育てておくことの
重要性も今あらためて感じていた。
つづく
☆☆続けてここを覗いてくださって感謝です。
by akageno-ann | 2024-06-13 20:03 | エッセ- | Trackback