熱中症に気を付けて


その2 翔一郎の努力
日常生活というのは、一週間もすればある程度の形ができてくる。
翔一郎はよく眠れているようだった。
四人部屋だった病院生活は自分より年配の人々と一緒で唸り声や泣き声が
夜中に響くこともあり安眠剤を使わないと眠れないことがあった。
しかし自分の寝室で隣に妻の美沙と供に眠るようになって
熟睡できる夜が戻ってきた。
もともとよく眠れる方で、結局彼の病気は飲酒の多さと食事の
アンバランスが要因になったのかもしれない、と思うと、
美沙は自分の力のなさを感じずにはいられなかった。
今の状態を呼び込んでしまったことに改めて辛さが募った。
翔一郎は穏やかな性格になったが、その分何かをやる気力を失っていた。
穏やかにこのままの時間が過ぎていけば、と思えたのはほんの最初だけであった。
リハビリは続けなければこれ以上の好転は望めないのだ。
どうしても日常に敢えて行うリハビリがそれまでよりも多くすることが困難だった。
週に二度、在宅リハビリに若い訓練士が来てくれるが、
翔一郎はお茶を濁すような態度があった。
大きな病院のシステムの中で時間に区切られた生活の方がやはり
やらねばならない、という使命感ができるのだと、思い知らされた。
だが、そんなことを思ってみても決して前には進めない。
とにかくここで何かを行おうとする意欲を湧き上がらせる必要があった。
家族四人の新生活はまだほんの序の口にあった。
翔一郎の母信子は、ひたすら幼い翔一郎を思うような気持ちで接していた。
最初から意見の相違を話し合うことを避けたが、美沙は
この状況はあきらかに翔一郎の気持ちの後退を感じていた。
母がこうして命をつないで戻ってきた息子を、それだけで喜び、
迎えている姿は決していけないものではないのだ。
新しい局面はすぐに顕著になり、美沙は何かの打開策を考えていた。
つづきます
暑いですね、PCなども暑さに疲弊しているようです
在宅中もどうか熱中症に気をつけてください♡♡
by akageno-ann | 2024-07-08 09:34 | エッセ- | Trackback