休日のヴィシソワーズ
その7 訪問介護
訪問介護のスタッフは四人で曜日を変えて、内容も違えて訪問してくれた。
歩行などのリハビリは男性スタッフであったのでその力強い介助に
翔一郎も安心して身を任せ、一歩でも足を前に踏み出す訓練を
週二回午前中に行っていた。
しかし家に帰ってきてからはどうしても気持ちに緩みも出るし、
母信子の感情的な声援も逆効果になったりすることがあって、
思うような効果は出ていなかった。
しかし椅子に座ってテレビを見たり、時に理子と絵を描いたりする
作業は比較的進んで行ってくれるようだった。
もう一人のスタッフは年配の女性で主に掃除を行ってもらっていた。
手馴れた様子で手際よく掃除をしてくれるのであり難かったが、
身体障害者の家族を多く知っているせいか、彼女の持っている経験を
言葉の端々に出すことが多くなっていった。
信子はそれを大変ありがたいアドバイスとしてよく話を聞いていた。
そしてその都度感心し、美沙に強く要求するようになった。
良さそうなことは全てやってみたいという勢いが
信子の頭にはあったのだ。それも当然のことであろう。
その信子の様子を見て、女性スタッフは主に信子と話をするようになっていった。
家族の中で患者とどうかかわるかは、そのキャラクターによって
異なるのを在宅介護になってから強く感じる美沙だった。
それだけにこれまでとは違って日常のどの時間も夫翔一郎のことを
中心に考える生活になっていったのだ。
外部の人が入ってくる家庭は、平穏な家庭ではなかった。
また介護の専門知識も不足している現状の中で、その専門家からの助言によって、
単純に洗脳されてしまう者もでてくることを実際に感じていた。
人間は弱いものである。
一人で持ちこたえられない現実にふと人の意見をたやすく取り入れて、
家族同士の亀裂が生まれることもままあることを美沙はまた
新たに理解していったのだ。
つづきます
※雨がちな休日 どうかお体を休めてください
私は今日は出かけますので早めにその7をアップしました※
by akageno-ann | 2024-07-15 10:25 | エッセ- | Trackback