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クリとクリクマ


デリーに住んでいた頃
買い物に大きなマーケットに出かけると
車から降りる頃にはたくさんの
籠を頭に載せた少年たちに
取り囲まれるのでした


はじめは戸惑いましたが
そのうちの一人を選んで買い物に
連れだって歩かねばなりません


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クリという荷物運びの子どもたちでした

海外にはこうして家族の生計を
扶けて暮らす子どもたちが
たくさんいます

できる限り平等に雇いたいのですが
次第に顔見知りの少年に
頼むことが多かったです

雇われなかった子どもたちも
引き際が良いのが幸いでした


上の花は花壇に一度植えたら
毎年咲いてくれるクルクマという
インド アフリカ原産のウコンの
仲間です

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気に入って今年の春は球根を買いました
クルクマを見るたびにクリという
少年を思い出すのです

クルクマは道行く人に
よく名前を尋ねられました

なかなか咲きませんが
今年は駅前の花屋さんで
鉢植えを見つけて買いました

花は切り花にすると
あとの株からまた咲くと
言うので暑い中枯れさせないように
気を付けてます

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こんな暑さの中でも道ばたも
この子たちも毎朝元気に
咲いてくれて励まされます

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花が季節をしっかり
教えてくれます

オリンピックは若者の
ひたむきで優れた会話を
伝えてくれます

初老?ジャパンという
馬術や若きフェンシングにも
感動しています
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小説は第八章 その3です
暑いのでもし涼しい場所で
お時間ありましたらMOREにお立ち寄り
ください(_ _)








その3 国際電話


 翔一郎は自宅に戻ってきた当初は、まるで以前とは

人が変わったように、家のことに興味を示さず、ただぼんやりしていたが、

誕生パーティを行ってから、次第に自分に今の状況が理解されてきたようだった。

ただ穏やかになってしまったかと思われた性格にも

起伏が見え出し、たまに落ち込んだり、


ごく稀に苛立ったりしている様子が伺えた。

それが長年連れ添った夫と初めて向き合うような気持ちに

させられることに美沙は時折戸惑ったが、

不思議なことに後悔や哀しさがなかった。

これまでの闘病生活を支えた者としての新しい

自覚が美沙の中に育っていたのだった。

だから、平田メイ子が下宿人のようにこの家に入りたいという

申し出にも何か大きな変化がもたらされることに次第に期待感を募らせていた。


おそらくは娘の理子ともいろいろな問題が起こるのかも

知れなかったが、いずれは理子もここを出て行くであろう

ことも想定し、新しい局面に積極的になる心が生じていた。

平田メイ子の両親が話し合った結果を電話してきた。

久しぶりによう子も電話に出てきた。


「美沙さん、ご主人のご病気は大変そうですね。

メイ子も大変心配しています。あの子は貴方が好きなのですね。

だからあなたの少しでも手助けをしたいのだと、思います。

本当に手助けになるのか、今の私にはメイ子のことが

わからないのだけど、主人は美沙さんの元なら安心だといいますから、

お願いします。下宿代は払わせてくださいね」


その言葉には優しさが感じられた。美沙は、

「最初はそんなことをしてはご両親が心配されると

思ったのですが、デリー時代のメイ子ちゃんのままの

素直な優しい気持ちに心打たれました。

我が家は主人もその母もそして娘の理子が大変喜んでいるのです。

下宿代は本人と話し合って決めさせていただき、ご報告します。

こちらもお世話になるのですから、本当に実費だけいただくことにしたいです。

何か問題が出たときはいつでもおっしゃっていただけますよう、

メイ子さんにもご両親にも申し上げておきます」


少々固さのある言葉だったが、よう子には美沙という人間が

昔とかわらない良い人間であるとわかるような気がしていた。

美沙は勝気な面も持ち合わせて、決していい加減なことをしない

人間であることも、よう子はよくわかっていた。

若い頃に二人の中に生じた亀裂もこうして長い年月を経て、

娘の成長によって埋められていることに二人とも何となく気づいているのだった。

そして美沙はメイ子の部屋をアンが喜んだような女の子の

夢を見られるような部屋にしようと考えるのだった。

平田メイ子は幼い頃をデリーで美沙たちと三年、

それはまるで家族のように共に過ごした記憶があった。

めい子は両親に大切に育てられていたが、母よう子による

特殊な生活によって、本来の子供らしさが奪われていた時期があった。


デリーではサーバントの中のアヤという子守を専門にする

女たちによって子育ての大半が行われていた。

もちろん主たる教育は両親が行うが、それにしても朝の起床から

夜の就寝までの身の回りの世話をそのアヤによって

優しくやってもらうような日常があればどうしてもお姫様のような

扱いがなされるのは仕方のないことでもあった。

メイ子は誰にも笑顔で接する子供であったので、

ことさらにアヤにも可愛がられ、途中アヤの交替もあったが、

楽しく日々を送っていた。

しかし、子供心にアヤが自分の両親に雇われている

人間であることは、事実というよりニュアンスで感じ取っていたようで、

同じく可愛がってくれる日本女性に対する憧憬の思いは特別のものだった。


美沙はその中でも特にメイ子の心を捉えていたのだった。

だが、メイ子の母よう子が様々な思いの中でメイ子を美沙から

遠ざけたこともあり、幼い心の中で不思議な思いにかられたまま、

日本に戻っていたのだった。

その美沙にメイ子はこうしてその夫翔一郎の病気見舞いに

よって再会し、改めて大人の女性としての魅力を感じたのだった。

美沙とまた再び毎日の暮らしをもっと密に行えることに

メイ子は感動していた。

そして今度は理子という思春期の美沙の一人娘も一緒であると

いうことをしっかりと念頭に置いた。

自分のそれまでの歩みの中で学んだ、人に対して優越感をもって

接しない、という思いをさらに強くしていた。

                    つづく


   ※今日は長くなりました。デリーを懐かしんでいます。

  暑さの中お立ち寄りいただいて感謝します。※



by akageno-ann | 2024-08-02 16:32 | エッセ- | Trackback