オクトーバーフェス 神宮外苑






当時の東京の教員採用試験には東京以外の地方からの受験者も
多く難関であった。
先に上京した先輩教員二人が試験の準備について当時は
手紙で丁寧に示唆してくれた。
今ならばメールや電話で簡単にできる交流は電話代も地方からは高く
交換手に繋いでもらう時代だった。
その時代の手紙が実に丁寧で文字も美しくずっと保存していたほどだ。
その指導により孝之もまた1度目の挑戦で東京への進出が決まった。
四月の始業式に間に合うように短い期間での準備は間に合うはずもなく
取るものも取り敢えず孝之一人が先ず上京した。
親切な先輩教師の家に投宿させてもらい、東京のN区の小学校に
新任の挨拶に行った。
その小学校は大規模校で1学年4クラスあった。
早速5年生の担任を言い渡された。
校長は定年までにあと三年という孝之からみると老齢の雰囲気があり
まだその人柄まではわからなかった。
張り切っている地方から出て来たばかりの若い者には
少々高飛車な物言いであった。
孝之は人一倍負けん気も強く、しかし両親に言われたように
先ずは大人しく先人に従うように心がけていた。
一方高知の妻のしのぶは母かねにすっかり世話になって
チッキという鉄道で送る荷物を準備して投宿先に送っていた。
まだ家も決まる前だから最小限の生活用品だった。
孝之が仮住まいの家を見つけたらすぐに出発できるようにしていた。
未だ幼い娘と二人だけの旅は無理なので
学生だった孝之の弟満夫が付き添うことになった。
そして出発までに近所の人々との別れを惜しんでいた。
娘は二才になろうとしていた。亜実という名ですっかり
皆から甘やかされて育っていた。
それまで一緒に過ごしていた亜実の祖母かねは
寂しさを堪えて二人を手放す心の準備もしていた。
☆☆仁淀川に帰す 第2章教師への道を終わり
東京編につづく
by akageno-ann | 2024-10-29 18:05 | エッセ- | Trackback


