スマホを文庫本に
その声が好きという理由で中学校時代の国語の教師に
憧れて亜実は放送部で朗読に取り組んでいた。
亜実の声は歌うと高いのに朗読の声は低く落ち着いていて
顧問の教員から重宝がられた。
ただ快活に楽しい放送には向いていないようで
花形だった体育祭のアナウンスはさせてもらえなかった。
中学校というのは人生の中でも大きな経験をさせてもらえる
最初の場所だったように思えた。
北海道から転入してきた女子は家庭に複雑な問題を抱えていて
家が近いせいもあったが担任教師から頼まれて毎日迎えに行く、
という役目もあった。
夜半に急に泣きながらその子が亜実の家を訪れて、
母しのぶが夕食を食べさせるということもあった。
亜実は少し困ったな、と思っていたのだが、
両親ともに手伝ってあげなさい、というので
暫くはそのようなことが続いていた。
しかし一ヶ月ほど経ったときに彼女は突然にまた別な地に
家族と移転していった。
少しホッともしたがその後の消息を担任も知ることはなかった。
卓球部に所属していたが自分がスポーツのセンスがない、と感じて
また家庭科の教師に頼まれて家庭科クラブを復活させることになった。
当時は文化祭でクッキーやプリンを作って提供するのが人気があって
結局卒業までそのような世話役をやっていたのだった。
友人には恵まれて バスケや バレーで活躍する仲間たちと
学年集会は演劇もコンサートも行って良い時代だったようだ。
父孝之は亜実の成長をそれなりに満足していた。
つづく
by akageno-ann | 2025-01-29 12:44 | エッセ- | Trackback




