芽吹く弥生





第6章
その3
正之の将来を皆が楽しみにし始めた頃
姉の亜実は大学生になっていた
気の早い祖父母が高知に戻らせるために見合いの話を
持ってくるようになった
しかしこの頃亜実は教師になることを目標にして
結婚など少しも考えてはいなかった
大学では合唱にも打ち込んで指揮者を目指してもいた
教員養成大学はあらゆるジャンルの良き指導者がいて
思いのほか毎日が充実していた。
音楽科の授業ではピアノの実技も有り難いことに熱心で、
国語科の科内でも競い合って練習に励んだりしていた
亜実は国語科だったが 美術も 書道もかなり本格的に
指導を受けられることに喜びを持ち始めていた。
教員になって教壇に立つべく授業も実践的なことが増えて行った
三年になると付属の小中学校で教育実習があり
そく実践に役にたった 不思議な大学であった
一方 正之は中学校から野球部に入ったが
バスケットボールにも興味が沸いて
一つに固執しない考え方を持ち始めた
野球はむしろ観戦することを愉しむようになった
バスケットボールの球技の技のぶつかり合いが
楽しくてしかたなくなったのだ
授業にあった武道も実に熱心に取り組んだ
剣道では体育教師に「筋がいいな」と言われたことが
張り合いになっていた
そんな正之にはこのとき一点の曇りもないように周囲はみていた。
つづく
by akageno-ann | 2025-03-02 19:04 | エッセ- | Trackback


