三寒四温と花々


その10
亜実は父方の祖母由岐のことを思い出していた。
すでに退職はしているが定年まで仁淀川沿いの村の
小学校教諭として務めた人だった。
活発でものをはっきり言う人で教師としては
教え子たちにとても慕われていた。
由岐は亜実の祖父伸之に後妻として嫁いだ人だ。
明るい性格で誰ともすぐに親しくなれるので
新しい場所でも皆に受け入れられ、頼られていた。
亜実にとっては最初から実の祖母のようで時々帰省すると
車を調達してあちらこちらと案内してくれた。
由岐は亜実が教職を一生の仕事として頑張ってほしかったのだ。
心の奥にいつかこの高知に帰って結婚して教職を
続けながら生きてほしいという願いがあった。
教え子の中に世話好きな人も多く 亜実の結婚相手を密かに
探してもらおうと考えていた。
そんな魂胆があってか年格好もちょうど良さそうな青年が
運転手として現れていることもあった。
しかし当時の亜実は故郷に帰る、と言う思いが
殆どなかったようだ
故郷は遠きにありて思い、時折こうして帰省し、
喜んでもらうことで十分なように勝手に思っていた。
高知城も 龍河洞も 桂浜も 室戸岬も 足摺崎も
実に魅力的な土地であった。
夏のよさこい祭り 観光客のように寄せてもらっていた。
ただ母の実家の神社の祭りにだけはなかなか
寄せてもらえなかった。
祭りの時期は皆が忙しくかまってあげられないから、
と言う理由であったのだ。
まだまだ故郷は亜実の中で遠いものであったようだ。
第6章 了
次回は第7章にはいります。
by akageno-ann | 2025-03-29 17:13 | エッセ- | Trackback


