ダンデライオン




その2
亜実は 夏休みを利用して高知に帰った
祖母の由岐が手ぐすねを引いて待ち構え親戚を
いくつか一緒に廻って亜実に挨拶をさせていた。
由岐の思惑の中に 孝之がこの地に帰らないのなら
亜実をこちらに嫁がせれば良い、というものが浮かんでいた。
そういう思惑を亜実の母しのぶは内心で敬遠していた
由岐は定年まで教員を続け 教え子に慕われる生活を幸せに
感じていたので同じ教員を目指した亜実にも同じように
定年まで頑張って続けさせたかった。
中学生の頃から夏休みには帰郷して皆に可愛がられて
いるような亜実ならそれも自然に受け止めるはずであった。
「亜実ちゃん、あなた高知の教員試験を受けたらどうぞね」
「こちらのほうが結婚して子育てしながら仕事を続けていけるよ」
と、盛んに勧めるのを気楽に聞き流していた。
しかし故郷の人々に可愛がられ帰郷しただけで喜ばれる
この時があとになってとても愛おしいものになった。
誰かが本気で繋いでいかねばならないものがある、
とその頃の亜実は漠然と感じていたのだった。
つづく
by akageno-ann | 2025-04-14 18:43 | エッセ- | Trackback


