葉桜になりにけり
その3
亜実が教職について4年があっという間に過ぎようとしていた。
弟正之は高校時代の野球部での激しい運動が災いしたらしく
腰を痛めていた。
若いからとあまり養生しなかったこともあり、運動をやれない
身体になってしまったのだった。
そのことが周囲を大きく落胆させていた。
正之はそういうときも落ち込んだ様子を見せること無く
リハビリしながらできる道を探し始めていた。
父孝之が小柄なのに運動は万能で少しの怪我くらいは
「大したことない」と片付けていたことが、
正之の病状を知らず悪化させていたのかもしれなかった。
孝之は男子である彼に過度の期待を寄せすぎたのかもしれない
と思いながらも後悔を口にすることなく、さりげなく
正之の行く末を案じ応援するつもりでいた。
教師という仕事は視野が狭くなりがちである、というのが孝之の持論で
教員になった亜実にも広い世界をなるべく見るように言っていたが、
そのことを実践しようとしていたのが正之であった。
正之はラジオ講座で語学を学び始めていた
厳しい部活の生活がなくなっていたのでその集中力を
学習に向けるのは容易であった。
彼は大学進学を海外に留学したいと考え始めていたのだった。
つづく
by akageno-ann | 2025-04-16 17:24 | エッセ- | Trackback







