花の形と 先人の教え
孝之は両親と姉に感謝しつつ 7月の末に羽田空港から
米国に向けて旅だった。
当日は母のしのぶと姉の亜実だけで見送った。
当時はデッキから飛行機に乗り込む人々が見えて、
その飛行機の機影が消えるまで2人はデッキに佇んだ。
小雨降る夕方でしのぶは
「どうか無事に。飛行機がどうしても落ちるならせめて帰りにしてください」
と、母親らしい静かな思いを胸に秘めていたのだった。
亜実は父の分も孝之を励まして見送った
「いいわねえ、私もいつか外国に行きたいな、たかちゃん頑張ってね」
と、姉らしい優しさで彼の手を握った
孝之は少し照れたがさすがに不安そうな表情も見せていた
不安なのは留守宅の皆も同じだった
高校生で短期でも1人でアメリカに渡る、ということは
この頃はかなり斬新なことだった。
行き先はニューヨークであった。
先方のホームステイ先は同じ高校生のいる家庭で、
同じ学校のサマースクールに通学できることになっていた。
当時すでに活躍していた同時通訳の鳥飼玖美子さんの本を
家族で読んだ。
母親が一番熟読してアドバイスを最後までしていた。
「水はミネラルウオーターを買って飲むのですよ
お腹が痛いときは正露丸か持たせた抗生物質を飲んでね」
そこのところを繰り返す母親の気持ちに亜実は感動していた。
つづく
by akageno-ann | 2025-05-08 18:38 | エッセ- | Trackback







