カズオ イシグロ氏 (追記 小説アップしました)
その10
正之はアメリカに短期留学して半年が過ぎ 英語の方への
情熱はかなりはっきりとしたものとなった。
鳥飼玖美子さんの留学の本をバイブルのようにして
ラジオ講座やテレビでの語学番組を欠かさず見ていた。
その熱心さが亜実には眩しかった
亜実は「ある日のヨーロッパ」というショートの旅番組を
友として就寝前のひとときを過ごす毎日だった
教師としてまだ二年 大学時代に友人はパリに留学した者もいる
単なる憧れで終わった自分に比べて弟正之は実に熱心で
ある意味羨望の眼差しで見守っていた。
亜実はこれから正之が海外に本格的に留学したら自分は
物見遊山で遊びに行こう、などと考えていた。
同じ家族として過ごしていても学習する能力は
異なるのだと思い知った。
友人のMは実は大学時代に仏文科に進んで
3年でパリに留学 そして今フランス人の恋人を
連れて帰国している。
高校生の時から親しかったので彼女の母親が悲痛な声で
亜実に電話してきて次の休日に来てほしいというのだった。
なんどかエアメールで彼女と文通していたからいずれは
国際結婚か、とも想像していたが革新的と思っていた
彼女の母の狼狽え方に少々心が沈んだ。
早速土曜日の午後連絡して懐かしいMの家に出向いた。
あの冷静と思われた彼女の母がMとその恋人の
フランス人を前に日本語で愚痴るのに驚かされた。
つづく
by akageno-ann | 2025-06-13 05:03 | エッセ- | Trackback





