祖母の命日
終章 その5
亜実の弟正之は 様々なことを考えていた
姉が高知へ帰巣本能を持っていると感じ、申し訳ないが
自分は自由に海外に目を向けさせてもらうことにした。
母の実家の神社のことにも興味を持っていたが
故郷に時々帰っても地元の人間としては認めてもらえない
ようなところがあった。
父孝之の影響もあったが歴史小説が好きで 坂本龍馬も
ジョン万次郎もまた岩崎弥太郎にも興味がわいて
折に触れてその業績を注視していた。
近年には吉田茂氏の英語力に感動していた
彼が土佐出身であるとは意外に周知されていないようであった。
父を見ても また祖父伸之をみても四国から出ようとしていた
ことは明らかであった。
四国の中でも太平洋側に近く、本土に遠かった高知県の人々の中には
立身出世を夢見る男たちが多かったようにも感じるのだ。
そしてその血筋は知らず正之にも流れていた
亜実は長女ということもありまた高知で生を受けたので
赤ん坊のころの亜実を皆が知っていて帰郷すると
「あみちゃん あみちゃん」ともてはやされるような面をもっていた。
幼い頃に可愛がられる記憶はずっと脳裏に刻まれているのだった。
正之は祖父の温厚さと 父の勝ち気さの両方を兼ね備えていて
成長と共に実に堅実な考え方をするようになった。
そこが亜実には一番頼もしく嬉しいことでもあった。
つづく
by akageno-ann | 2025-08-01 12:29 | エッセ- | Trackback






