8月17日 葉月

その8
正之の手術は5時間に及ぶものになった。
しかし当初隣の病院に移送する、と言われたときの失望は
払拭され、本多という医師によって検査された結果
「くも膜下ではない、脳出血なので手術できます」と言われ
親の承諾の下、即刻手術室に運ばれたことは幸運であった。
本多医師は脳外科専門でその人に診てもらえたことが
大きな幸いであったのだ。
夜中まで続く手術 途中看護士が二人交代で手術室から
出てきたとき手術室を凝視する我々家族にそっと寄ってきて
「私たちは交代いたしますが手術は順調に進んでおります」
と、いう言葉に
「必要不可欠な暖かい言葉だな」
と孝之と共に亜実も母しのぶも感動したのだった。
真夜中に本多医師が正之の乗っているストレッチャーと共に現れ
すぐに手術室横の談話室に呼ばれた。
「お疲れ様でございました」と孝之は挨拶し、
しのぶも亜実も一緒に頭を下げた
「手術は成功しました。
ただ目覚めてみないと今後のことはわかりませんが
命は大丈夫だと思います。細い血管が切れてそこからの
出血が多く脳内でゼリー状に固まってしまったものを
できうる限り丁寧に取り除くことはできました。
時間の経過とともに広がったので脳内の損傷が心配です」
亜実はただただ涙が出て言葉にならず、母のしのぶはこういうとき
気丈に振る舞えることに驚きがあった。
「あとはあの子の生命力ですね」と一言しのぶが
「そうです、若いですからね、リハビリも必要になるので
生命力と体力にも期待させていただきたい」
その日は夜半から激しい雨になり ひとまず亜実がそこに残ることにして
両親に家に一旦帰ってきてもらうことにした。
つづく
by akageno-ann | 2025-08-17 09:02 | エッセ- | Trackback




