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LIVE no.8

小説を書いています。

かけがえのない日本の片隅から
LIVE no.8

姉牧子とは一度だけ海外旅行を一緒にした。

嫁ぎ先の家業ともいえる印刷工場の慰安旅行でハワイに行くことになったときに、急に欠員ができたときに まだ看護学生時代の冬休み中だった悦子に誘いがかかったのだ。

悦子ははじめあまり気は進まなかったが、母から
「せっかくの機会だしなかなか行けない海外旅行なのだから行っておいで」・・
という後押しがあって、参加することにしたのだった。

5泊7日という長い海外での休暇はあとにも先にも悦子はそのハワイだけになってしまった。

牧子の方は慰安旅行という形で二年に一度主催者側の家族として それまでも韓国、タイ、インドネシア、グアムなど比較的近い外国で経験をしていた。

子供たちも行くのであるから、かなり豪勢な話だった。

そんなときの姉のはしゃぎは実家にいたときの姉のようではなくて、結婚して10年ほどが過ぎると完全に相手の家風に染まるのだな、と悦子は漠然と感じていた。

ハワイは航空会社のキャンペーン中で待遇もよく、機内も広々とした席をエコノミーなのに宛がわれたりして快適であった。

悦子は初めての海外に心は次第に融けていって、楽しみ始めた。

会社の社員たちも奥さんの妹、という悦子に親しみを持って接してくれたので、姉がその人たちとうまくいっていることもわかって、悦子は嬉しかった。

ハワイはマウイ島のリゾートホテルでスパが充実しているという優雅な場所だった。
あまりアウトドア派でない悦子はホテルの部屋のベランダでのんびりと海を見た。

ヒーリングエステも誘われて受けてみたが 夕日の見える大きな窓の前のベッドに裸で横たわって大きなコットンのタオルケットをかけられて至福の時間というものを過した。

学生の身でこんな贅沢はいけない・・と祖母に言われそうだと思ったほどだ。

しかし一生に一度なら許される経験であったと後年になって思い出すことであった。

                                つづく


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羽田国際空港を覗きました。羽田はちょっと近くなった印象でした。
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# by akageno-ann | 2010-11-17 11:05 | 小説 | Trackback | Comments(8)

LIVE no.8

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かけがえのない日本の片隅から
LIVE no.8

人生は順風満帆という船に乗ったときは突然に襲う危険な波があることを忘れてはならない。

そう言ったのは悦子たちの祖母だった。

「人の人生には、皆平等に幸いも災いも起こりうることを忘れてはいけないのだよ。」

そう悦子は大学受験をせずに看護学校を選んだときに言われたことを常に覚えていた。

祖母は哲学的にものをいうのではなくて、日常のたわいない会話の中にふとはっとさせられるようことをいうことがあった。

悦子が30才近くなっても結婚の話もないこともかなりの老齢になっていたが

「出会うときに良いご縁に恵まれるのよ。」と 少しも焦る必要のないことを話していたのも、つい最近のことのように思い出せる。

祖母はたくさんの生きるための心情を語りながら90歳卒寿を迎えた明け方に静かに永遠の旅に旅立っていった。

その祖母の旅立ちの日も悦子は、姉や従姉弟たちと祖母の亡骸の前で祖母の生き方と孫たちへの愛情の深さをしみじみと話したことだった。

日ごろ少々気の強い祖母に40年も添った嫁である叔母も

「おばあちゃんはすごい人だったわ」と姑を最高の賛辞で見送っていた。

その日の姉牧子は 子供二人を連れていて、曾孫を見せることができたことに満足していたのだった。

あどけない子供たちは曾祖母の亡くなったことを悲劇ではなく、明るく見送っていた。

お参りするために健気に手を合わせる所作も可愛らしく、周りの人々をほっとさせていた。

こうして人の命はつながれていくのかもしれない、と看護士として最後の祖母の様子を看取った悦子はある感動をもって子供たちを見ていた。

                               つづく →☆
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# by akageno-ann | 2010-11-16 08:27 | 小説 | Trackback | Comments(4)

LIVE no7

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小説の最初はこちらから→☆

かけがえのない日本の片隅から
LIVE no.7

姉牧子は幼い頃から積極的ではきはきとものを言う実に聡明そうな子どもだった。

妹悦子はその姉にくっついていれば、何かと世話を焼いてくれるし、頼りになるので、安心して生きていた。と言ってもいいほどだ。

姉の進む道は間違いがない、と幼心に思っていたし、事実進学なども受けたところにスパッと受かって、学生時代を謳歌しているように見えた。

友人もたくさんいて、姉が高校生になった頃からは別行動になることが多く、少し寂しい思いもした。一緒にならっていたピアノはさっさとやめてしまって、ピアノに向かうことも殆ど無かった。

姉は音楽的センスは持ち合わせていると思うだが、今の環境も殆どそこからはかけ離れているようだ。夫の真一郎は体育会系で、今はゴルフに夢中になっているという。

そんなときに娘の直子が音楽も興味を持っていたことは悦子はとても嬉しく感じたのだった。

同じ血が流れている可愛い姪であることをじんわりと幸せに感じられた。

それから直子は近くの音楽教室に通わせてにもらうようになった。

そこで出会えたピアノ教師によって、確実に音楽的素質を引き出してもらえていた。

家族はごく普通の稽古事というような思いでしかいなかったのだが、直子の指導教師は彼女が音楽の道に進めるのではないのか・・と小学校の5年生の頃に強く思うようになっていた。

「直子ちゃん、貴方は音楽の学校に行きたい?」

そう聞かれて、直子はきょとんとした。

「音楽の学校って?宝塚とか?」

「宝塚のことは知っているのね・・・あそこは中学校を卒業しなくてはならないけれど、そうでなくて、この東京にある音楽大学の付属の中学校のことなの。」

「そういう学校に行くとピアノをやる時間があるの?」

「そうなのよ、音楽の授業が多いの。私はね、中学校からそういう学校にいたのでそのまま大学まで楽しく勉強できたものだから・・一度おうちのご両親とお話してみて?」

「はい、そうしてみます。音楽がたくさんある授業って嬉しいです」

直子はさっそく母親に話してみよう、と少し高揚した気持ちを抑えられない思いで帰宅した。

                              つづく→☆ 
この小説はフィクションです。
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# by akageno-ann | 2010-11-13 15:20 | 小説 | Trackback | Comments(9)

LIVE no.6

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かけがえのない日本の片隅から
LIVE no.6

牧子は夫 健との結婚生活は順当に続いているようであった。

しかし悦子から見れば、姉は結婚して随分と婚家先に合わせようと無理に努力しているように見えてしかたがなかった。

その無理があとで変化していくのではないか?という何気ない想いが若い悦子にはあったかもしれないが、さしてそれを問題にしようという気は、そのときはなかった。

牧子の子供たちはもちろん悦子の甥と姪にあたる。

その男の子も女の子も悦子を大好きなお姉ちゃんというように親しみ幼い頃からあちこちついて廻っていた。
特に末娘の直子は音楽の趣味への扉をこの叔母である悦子によって開かれていったのかもしれなかった。

直子が小学校の1年生になったばかりの頃、悦子はその入学祝いに直子を「子供たちのためのコンサート」というタイトルのサントリーホールでの催しに連れていった。

オーケストラ編成でのコンサート形式で、各楽器の説明や演奏する曲の説明、作曲者の話などわかりやすく楽しい催しになっていた。

まだ6歳の直子がどれほどの興味を持つか?と興味津々で連れて行った悦子だったが直子はおどろいたことにキラキラとしら目でその舞台をみつめ、厭きることなく音楽と話を聞き入っていた。

「お姉ちゃん、直ちゃんは音楽が大好きみたいよ。ピアノをちゃんと習わせたら良いと思うわ。」

そんな風に姉にリクエストしたのだった。
                         つづく→☆no.7

小説はフィクションです。

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# by akageno-ann | 2010-11-11 07:11 | 小説 | Trackback | Comments(16)

LIVE no.5

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かけがえのない日本の片隅から
LIVE no.5

悦子の姉牧子は子供の頃から友人との付き合いもうまく悦子は牧ちゃんの妹・・という呼び名で可愛がってもらっていた。

親戚の中でも年長で目立ち従姉弟同士の中でも仕切り役で一目置かれているのが牧子だった。

歌が好きでカラオケでは皆から囃されて上手にいろいろなジャンルの歌を歌っているのも彼女だった。

悦子も音楽は得意なのだが、率先して歌う方ではなく、静かに聴衆に廻っていることが多かった。
悦子の中にはさして僻む、という感情はなかった。

いつも頼れる姉に庇護してもらって安全な暮らしをしている、と言った感じであったのだ。

だが姉の早い結婚により家族の中で娘が一人という情況になり、生活はかなり大きく変化してきた。
今までの追随して生きていくのではなく、自分で判断する必要のあることがいかに多いか、両親との関係も甘える立場から逆転していく経過を感じるようにもなっていった。

嫁いでしまった姉の方はある意味実家は疲れ休みに来るようなもので、嫁ぎ先の印刷会社の仕事の大変さとはぶりのよい雰囲気が彼女を快活にしていた。

ただ、子供たちの教育には常に頭を悩ませる要因があり、末娘は音楽の道に行きたいと言い出したようで、経済的にはなんとかなりそうなものの、才能の点で不安がある、とそこのところは冷静な見方をしていたようだった。

                             つづく→☆no.6

小説はフィクションです。

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このお写真の方たちが遊びに来てくださいました。お写真も拝借してます。

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# by akageno-ann | 2010-11-09 10:25 | 小説 | Trackback | Comments(15)